人件費は「投資」


先日、ある製造業企業の経営者にお話を聞く機会がありました。


その企業は、従業員が120名弱、売上30億の中小企業です。

自社ではどうしても対応できない専門技術を要する部門に3人だけ派遣従業員が在籍しているものの、他の従業員は全て正社員もしくはパートタイマーという純血主義を貫いています。


その経営者は、どのように経営が苦しい時でも雇用は絶対維持する、派遣社員の採用による人件費の削減も絶対しない、という信念を貫いています。

その理由は、従業員が辞めたり派遣社員が増えることによって、技術やノウハウの蓄積や承継ができなくなるからです。


中小企業が長年にわたって蓄積してきた技術やノウハウはその企業の財産であり、資産です。

それが、継承できなかったり、失われたりすることは、企業の存続に大きな影響を及ぼします。


経済情勢の悪化などにより収益が圧迫されているとしている中小企業がどのように対応しているのかを見てみると、多くは人件費以外の経費削減により対応している一方で、賃金調整・雇用調整を行っている中小企業も約2割存在しているという統計結果が出ています(2010年版中小企業白書)。特に、輸出型製造業においては、収益が圧迫されている中小企業の約4社に1社が賃金調整・雇用調整を行っており、特に厳しい状況にあるそうです。

こうした賃金調整・雇用調整の内容をより詳細に見ると、多くはボーナスの切り下げ等といった賃金調整や残業規制等で対応しているようですが、他方で、希望退職者の募集や解雇といった人員の削減に取り組んでいる中小企業もまだまだ少なくありません。


人件費を文字通り「費用」と捉えてしまうと、削減、調整の対象になってしまいます。

しかし、自社の屋台骨を支える技術やノウハウを伝え、育てるための「投資」と捉えることが重要ではないでしょうか。


人にかかかるお金は、「費用」でなく「投資」であると考え、将来、より大きなリターンがあるように経営者の裁量で上手に運用していく努力が求められます。

投資を惜しむと企業の成長はありません。


先述した製造業の離職率は中小企業の平均を大きく下回っています。

そして、経営者は「いま、自分はとても楽をさせてもらっている、自分がいなくても誰かがなんとかしてくれるんです」と言っています。

決して、社長がサボっているという意味ではありません。

部下が、社員が、経営者が口出ししなくとも自ら考え、動く組織としくみになっているからなのです。


それは、「人」に投資をし続けた結果なのです。

社長がいなくても大丈夫な会社、理想的ではありませんか。






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